「誰かが、勝手に持ってたんだろ。いーじゃん、どっちか持ってけば。」



残っている2本の傘のうちの1本に、手を伸ばすあらた。



「だめだよ!この2本は元から差してあったんだから、他のお客さんのだよ。少し先にコンビニがあったから、そこで買お?」



「少し先って…かなり濡れるだろ。この雨じゃ。」



そんな風に、躊躇するあらた。



「じゃあ。あたしが走って買ってくるから。待ってて?」



勢いをつけて飛び出そうとすれば、その腕を強く引いた、あらた。





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