「そのわりには、ほっぺた真っ赤、だな?」



テーブル越しに伸びてきたあらたの指が、頬をつねった。



「……う、うるさいなー、もう。」



その頬を隠すように、うつむいた。



「ま?そゆうとこも、好きよー?」



完全棒読みのあらたのセリフは、それでも、あたしを喜ばせるのには、十分。



緩やかに流れる時間を、2人でシェアして、そろそろ出ようかと席を立つ。



「…あ、れ…?」



呟けば。



「ん?どうした?」



お財布を仕舞いながら、問い掛けたあらた。



「持ってきた傘が、ないみたい。」



あたしたちが入って来たときに、すでにあった2本の傘はちゃんとあるのだけど、あらたとあたしの傘だけが、ない。




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