「大丈夫です。あなたとあんずなら。」
自信たっぷりに、頷いた男。
「ちょっとした行き違いなら、心を通わせられますよ。遅いなんてことは、ない。あなたたちは、大丈夫。」
年の功ですよ。僕には、わかります。
ほほえんで見せた、隣の男。
「チケット、余っていませんか?大人気なんですね、この絵画展。今日のチケットもやっとのことで手に入れたんですよ。どうしてもあなたに会いたくて。」
尋ねられて、財布に一枚だけ残っていたチケットを差し出した。
チケット代を払おうとする男を制する。
「結構です。励まして貰ったんで。」
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