ムボウビハート




 いつの間にか、『私』から、『僕』に呼び方が変わっていることに、気がつく。



あんずを眺め続ける横顔は、窓の外を伝う雨が反射して写って見える。



泣いているみたいだ、と、思った。



きっとこのひとも、たくさん悩んで、苦しんで泣いたのだろう。



どうしようもなく、あんずに惹かれてしまった男が2人。



俺も、このひとと一緒だ。



ひどく、傷つけたのは自分なのに、そのことにまた、傷ついている。



そうして、歩き出せずにいる。



自分勝手な、勝手すぎる、俺。




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