後ろから、コツコツ、と靴音がしてきた。



たぶん、革靴だ。



振り返らずに、あんずを見つめる。



近づいてきた足音は、立ち止まらずに俺を追い越した。



あんずの、俺の絵の前で立ち止まったスーツ姿の背中。



静かに絵を眺める、背中。



その背中をぼうっと、眺める、俺。



ゆっくり、振り向いた男。



やがて、真っ直ぐに俺が座るベンチへ歩いてきた。



俺の目の前で立ち止まった、高そうな革靴。



「…失礼ですが。隣、いいですか?」



俺の返事も聞かずにもう、隣に腰掛けた、男。




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