どうしてユカと寝るの?

仕事だから。



どうして私の部屋にくるの?

便利だから。



言葉は出掛かるが、その度にトシの返答が想像できてしまい、さくらは結局、何も言えないまま。




あぁ、やっぱり私はトシが好きなんだ。

気付いて、でも、どうすることもできなかった。


そもそも、見ているものも目指す未来も違う私たちなのだから。



「俺、何かしたか?」


悪いのは、トシじゃない。

私でもない。


ただ、お互いにお互いが、同じ道の上にいないだけ。



だけど、そうわかっているからこそ、悲しすぎた。



「もうやだ。こんなのやだ。私もうトシといたくない」


ぐずぐずと泣きながら言ったら、トシは息を吐いて立ち上がった。



「じゃあ、もう、終わりにしようよ、こういうの」


あっけないものだなと思う。

でも、よくも悪くも、それがトシという人間なのだ。


トシは誰にも執着しない人。



トシが出て行き、閉まった扉を見つめながら、さくらは溢れる涙を止められなかった。