仕事のために、トシはユカと寝ている。


大好きな担当のために稼いであげる。

そう思わせるために、そういう方法でキャストを管理することもある。



「色恋管理に引っ掛かるなんて、バカな子よねぇ」


ぼやく七海。



私とトシは恋人同士なんかじゃない。

それにトシはこの仕事を一生ものにしようとしているけど、私は違う。


私とトシは、違うのだ。



「そうですね」


返した声は、かすれていた。



最近、さくらが真面目に就職活動のことを考えようとしているのは、多分、トシとユカのことが大きいのだろう。


気にしないように。

自分にとっては何でもないことなのだと言い聞かせるように。



「私には関係ないですけどね」


なのに、どうして悲しいと思ってる自分がいるのだろう。

だけど、自覚したくはなかった。


トシは同い年で、同郷で、同じ高校出身で。


でも、見ているものが違いすぎるから、想いを自覚したところで先があるとも思えないから。

だから、何か言う気にもなれなかったのだ。



トシは相変わらず、時間を見つけてはさくらの部屋にやってくる。

ビールを飲んで、セックスをして。


表面上は何も変わらない。



でも、いつの間にか、トシには役職がついていて、期待されてるユカを繋ぐためにセックスをしていて。