18時の、10分前。

彩はそわそわしながら駅前に立った。


何度も時間を確認しては、高槻がくるのを今か今かと待ちわびた。



しかし、高槻は、約束の時刻を過ぎ、それからさらに1時間が経ってもそこには現れなかった。


もしかして私は何か間違えたのだろうかと、焦った彩は高槻に電話を掛けたが、それはコール音さえ鳴らずにすぐに留守電に切り替わる。

期待が徐々に不安に変わっていく。



『愛してる』と、高槻は言ったはずだ。

なのに、どうしてきてくれないの?




高槻さん。

高槻さん。

高槻さん。





彩が心の中で呼んだのに呼応するように、駅前の大型モニターに映し出されたキャスターが告げる。



「続いては事故のニュースです。今日昼頃、轢き逃げ事件があり、男性が死亡しました。亡くなったのは会社員の高槻 恭平さんで、警察は犯人の行方を追うと共に、詳しい事故の経緯について調べています」


淡々と読み上げられる短いニュースの画面には、見知った男の顔写真があった。

彩に『結婚しよう』と言った、愛しい愛しい男の顔写真が。