もっとちゃんと、なじってほしかった。

最低最悪な女だとののしってほしかったのに、なのに高槻があまりに優しい声を出すから、彩は涙が溢れてくる。


母が死んだ時ですら泣けなかったのに。



「泣くなよ。泣きたいのは俺の方だろう」


言いながらも、高槻は彩を抱き寄せる。


恋焦がれ、ただ一心に求め続けていた人。

彩はその胸の中で、溢れた涙が止まらなかった。



「お願い。嫌いにならないで」

「大嫌いだよ」

「私、高槻さんがいないと生きていけないの」

「勝手なこと言うなよ」


本当に。

なのに、『大嫌い』だと言いながらも、高槻は彩を離さない。



「ねぇ、私、高槻さんのこと愛してるの」


愛してる。

そう告げた彩に、高槻は答えず、代わりに口を塞ぐようなキスをした。