あれから帰宅して、床に座り込んだまま、朝がきて夜になり、また朝がきて夜になった。
何度もスマホは着信音を鳴らしていたが、一度も出ないでいるうちに、いつの間にか充電がなくなって電源が落ちていた。
出勤しなければとは、もう思わなかった。
そもそも金なんてどうだってよかったはずだ。
それなのに黒川と寝て、それが一体何になった?
高槻さん以上に大切なものなんてなかったはずなのに。
あまりに幸せな夢を見過ぎていた所為で、現実がひどく痛い。
それでも涙も流れやしないなんて。
母の死を目の当たりにしたあの日に失ったものは、今も私を蝕み続けているのだろう。



