花吹雪~夜蝶恋愛録~




とぼとぼと、夜の街をひとり歩く。

吐く息が白い。



黒川か、高槻か。

寝るか、寝ないか。

捨てるか、守るか。



店長に望まれるままに生きてきた。

生きる意味なんて見つけられないから、それでいいと思っていた。


そうして気付けば彩は、ひとり暗くて孤独な場所にいた。



どうして私はこんなにも弱いのかと思う。



「待ってたよ」


ドアを開けた黒川は、目を細めて笑った。

彩も無理して笑おうとしたが、変に顔が引き攣るだけだ。



「お前は必ずくると思ってた」


腕を取られ、部屋の中へと引っ張られる。

バタンとドアが閉まる音を、背中で聞いた。


戻るべき道は、もうどこにもなかった。