変な妄想で「ぐふふ」と笑う陸に、セナは引き攣る口元が隠せない。



「ちょっと待ってよ。どこまで冗談で言ってるのか知らないけど、あんた前に、『まだ何も見つけてない』って言ってたじゃない。『ただ辞めるのは簡単だけど、それだと逃げただけみたい』だから、『何か得てからでもいいのかなぁ』って言ってたでしょ?」

「あぁ」

「『PRECIOUS』はクビになったけど、それはあたしの所為みたいなもんだし、あんたはもう一回ちゃんと他のホスクラでも探してやり直すべきだと思うよ。それについてはあたしも協力するし」


しかし、陸は笑顔のままに首を振った。



「もういいんです。俺はもうちゃんと見つけたんで」

「え?」


見つけたって何を?

眉根を寄せたセナに、陸は真っ直ぐな目で言った。



「俺はセナさんのことが好きです。セナさんの、真っ直ぐに人を愛する気持ちが、俺に向いてくれたらいいなって思ってます。でも俺はまだ全然ナオキさんみたいにかっこよくはないから、今は好きになってもらえないかもしれないけど、これからすっごい頑張るんで、長い目で見てください」


あたしはほんとは別に、純粋なだけの気持ちでナオキを好きだったわけじゃない。

だけど、終わった恋を、陸が肯定してくれるなら、少しはあの頃の気持ちも浄化するだろう。