「もう怖くないし! いつまでも子供扱いするなバカ兄貴!」

 私が怒ると、きまりが悪そうに兄貴は家の中に退散していった。
 探偵と二人きりになる。

「下着泥棒を捕まえてくれてありがとう」

 ずっと憧れていた人がこんなに近くにいることが照れくさくて、私ははにかみながらそう言った。

「いいよ。じゃ、俺帰るな」

 路肩に停めている車へ歩いて行く探偵。私はまだ探偵と話をしていたかったのかもしれない、気付いたら咄嗟に引き止めていた。

「待って! そういえば昨日熱があったのって……?」
「あれはただの風邪だよ」
「なぁんだ。もう長くないとかいうから、必死で看病したのにぃ」

 ほんの少し、拗ねた演技をしてみる。

「看病してくれてありがとう、お前は出来損ないじゃない」

 そう励ましてくれる探偵に私は、ぎゅっと心を掴まれたような気がした。

「い、いい加減なこというのやめてよ……」