「そしたら、一軒だけ該当したよ。それが楓だ。だから現行犯逮捕しようと楓の部屋で張り込み調査してたってわけさ」
「え、じゃあ死神の仮装は何で?」

「俺は楓の兄貴の友人でもあるんだ。楓が被害に遭う可能性が高いことを伝えると楓の親御さんから『張り込みのついでに死にたいばかり言っている楓にやる気を出させて欲しい』と頼まれてな。『私たちでは手に負えず藁にも縋る思いだ』って嘆いていたぜ」

 そうして探偵と兄貴で計画した、死神の仮装をして私を脅しもっと生きたいと思わせる作戦を決行したのだという。

「みんなで私を騙してたのね! 死神が私にしか見えないと思わせるように口裏合わせて!」

 話を聞き終えた私は探偵に怒った。
 違う、こんなことを言いたいんじゃない、私のために仕方なくしたことだって分かってる。
 死神が本当は人間なことが嬉しいのに……何で素直になれないんだろう。

「色々と嘘ついて悪かった」

 探偵が私に謝る。
 沈黙が続いていると、兄貴が仕事から帰ってきた。「お、その様子だと下着泥棒捕まえたんだなー?」なんて能天気に笑っている。