「ふぅ………」

「おつかれ、陽介」

タクシーの中でぐったりとしている僕に声をかけた、美樹。

「おう」

美樹_青井美樹。

僕・高原陽介の3歳上で、女優。

今は、milliのCMを撮り終わったところだ。

スタジオを出た時に、ばったり美樹と会って、一緒に僕の家でご飯を食べることになった。

「ねえ、聞いてよ。この前のドラマの監督がさぁ、私の演技に文句ばっかり言うの!」

「誰?」

「新谷監督」

新谷監督か。

あの人は、とにかく熱血!って感じの人。

僕は、意外と好きだけどなぁ。

でもこんなこと言ったら、美樹に睨まれそうだからやめとこう。

「あーあ、陽介みたいになりたいなー」

突然そんなことを呟いた美樹。

「なんで?」

「だって、あんたはまだ売れる見込みあるでしょ?私はもうファンの熱が冷め気味なのよ。」

「そんなことないと思うけど。」

"女王"と呼ばれるほど、芸能界で人気の美樹。

僕はまだ、高校2年生ってことでお子様扱いされるし、未熟だ、っていう批評も多い。

「クイーンだろ、美樹は。自信持ちなよ」

僕がそう言うと美樹は、にこっと笑って、

「陽介がそう言うなら、別にいいけど」

と、言った。

女の子ってよくわからないなぁ……。

"女の子"か。