「え、えーっとそれが、そうなんですよねー…」

気まずさで、下を向く。

「「まじか……」」

美菜と久留美は、呆れている。

「べ、別にいいじゃない!」

「まぁ、妄想癖があるもんね〜、明里は」

美菜が、うんうんと頷く。

「でも、理科ではそんなことしちゃだめだよっ……!」

久留美が、私に強く言う。

「そうだよっ……!井田センは、鬼だよ!おーに!」

美菜も加勢する。

井田センというのは、理科の先生。

40代後半の男の先生。

普段は優しく、井田センと、みんなに呼ばれ、親しまれているが……。

怒ると、鬼。鬼なんて見たことがないけど、本当に鬼なんだっ…。

井田センは、顔立ちが整っているから、
睨まれると威圧感がすごい。

それに、怒鳴ると、いつもの温厚さがどこにもなくなる。

そんな、井田センに怒られるなんてっ、
嫌に決まってるよ……!

「気をつけます…」

私が言うと、2人は満足して、

「必ずだよ〜」

と、言った。

絶対に妄想しません…!

私は、心に誓う。

「あ、梨紗先輩っ………」

前から、5人組で歩いてくる。

「梨紗は、高原くんの出る映画のヒロインのやつ応募したんでしょ〜?」

「もちろんよ。」