言葉を失うとは、こういうことだ…。 絵の具のにおいに混じる、あらたの甘い白。 壁に立てかけられていたり、床に置いてあるたくさんのキャンバスには…。 「ずっとずっと、考えてた。あんずのことだけを。」 色濃く香る、あらたの白。後ろから回された腕が、優しくあたしを包んだ。 「あんずが俺に、色んな表情を魅せてくれて、それを描かずにはいられなかった。あんずだから。あんずだけを描きたいと思ったんだよ。」 .