左手は背中を抱く。



右手はあたしの頭を撫でる。



その、暖かくゆっくりとしたリズムがあたしを落ち着かせてくれた。



あらたの胸に顔を埋めれば、いつもの冷たく澄んだ香水の香りがする。



冷たいのに、甘い。



この香水はあらたそのものだ…。



「あんず。顔、あげろ。」



一言ずつ、区切るあらたの癖。



あたしの注意を引くためだと思っていたけれど、もしかしたら、あたしの深いとこまで言葉を届かせたいのかも知れない。



そうしてあらたはあたしに刻みつけるんだ…。



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