「…あんず。どうした?」 どうして…?どうしてこんな時だけ、優しい声を出すの…? どうしてあたしの動揺を見抜くの? 黙って、抱いてよ。 だって、あらただってあたしを使うくせに。 こんな時だけ、ズルい。 玄関にずるずると座り込んだあたし。 「あんず。」 一言、あたしの名前を呼んだあらたは、自分も玄関に膝を突いてそのままあたしを、抱きしめた。 .