「あ…、」 思わず上げた声に、 あらたがゆっくりあたしを見た。 「どうした?」 なんて、助手席のあたしの髪に手を伸ばす。 優しい手つきで、あたしの髪をなでる。 その優しさに、鼻の奥がつんとして、ぎゅっとくちびるを噛みしめた。 ひとつ大きく深呼吸をして、『大丈夫』自分に言い聞かせる。 「香りが…」 呟けば、 「ん…?」 聞き返してくれたあらた。 その表情は、とてつもなく優しい。 .