エレベーターを降りるとまだ、空は明けていなくて。 でも完全な夜でもない。 夜と朝の狭間にいるようで。 不安、とはまた違う感情があたしを支配してゆく。 『恐い』のではなく、少し、落ち着かない。 知らない間に、あらたの手のひらをぎゅっと握っていた。 それに気がついたのは、あらたがぎゅっと握り返してくれたから。 コーヒーカップを握るしなやかな指先や、あたしを抱く強い手のひら。 頭を撫でてくれる優しい温度。 その総てが、あらた、なのだ。 .