「…本当にここで合ってるよね…?」
次の日、私は家から十分ほど歩いたところにある地区センターに来ていた。しかし、人も見当たらなければ、珍しく中も電気が点いていない。建物の前でうろうろしていても仕方ないので、軽く辺りを見回してから入り口側の扉を押した。鍵は掛かっていなかった。あまり来たことがなかったためか、予想に反して扉は軽く、思い切り押してバランスを崩した私は何かのスイッチを踏んでしまった。
「…あ。」
カチリという音と共に、壁に掛けられた時計が鳴りだし、館内放送の始まりを告げた。
『あー、あー。初めまして。レノさん。待ち合わせ場所に五分前到着、素晴らしいですね。』
放送で椅子に腰掛けるよう促され、私は近くの丸椅子に浅く腰を掛けた。
『それでは、成人の箱のルールについて説明していきますねー。』
放送と同時に足元から何かが勢いよく吹き出すような音がして、体がビクッと跳ねた。見てみると白い煙が既に足元を覆っている。思わず立ち上がってスピーカーに目を向けるも、放送は止まることなく流れ続ける。
『えー、やってもらうことは一つです。三人一組で、後程渡される手紙に従って成人の箱から脱出してください。』
放送の人は続ける。
『それとですねー、先程三人一組と言いましたが、事前調べにより相性の最悪と言えるメンバーを集めました。頑張ってくださいねー。』
予想していなかった言葉に「えっ?」と声が漏れる。その時、フッと足の力が抜けるのを感じた。しかし、私が床に倒れこんでからも、淡々と説明は続いていく。気づけば辺りには、白い煙が充満していた。
も、もしかしてこの煙って睡眠ガス的な?
『あー、ですが安心してください。そこで出会った人は…で…』
何?よく聞こえない。このガス、説明が終わってから充満させれば良かったのに。
そんなことを考えるも、意識は遠退いていく。
怖いよ。お母さん…
『それでは、健闘をお祈りします。』
頭の中で声が響いた。