「ね、」

そんな風に微笑まれたら、「恥ずかしい」気持ちと、律さんの隣に座りたい素直な気持ちが、ごちゃまぜになって、また、思わず下を向いた。

「あなたと、おんなじ音楽が聞きたい、です。あなたの隣で」

重ねられた言葉は、どこまでも優しくて。

素直に、立ち上がってゆっくり律さんの隣に座った。

「…じゃあ、はい」

イヤホンを片方差し出す。

「ありがとうございます」

一瞬触れた指先は、やっぱりぬくい。

そのことに深い安心感を覚える。

流れ出したラブソングは、律さんの左耳と私の右耳からふたりの体の中にゆっくり落ちてゆく。

1つの曲を、半分こ。


シアワセな1日の、はじまり。