「お二人さーん、待たせたねぇ。帰っちゃっていいよー」

さっきの刑事さんに話しかけられて、ベンチから立ち上がった。
 
「でも、あなた。本当にこれ以降付きまとわない約束と、離婚届に判押す条件だけでいいのかい?」

掛けていた眼鏡を外しながら、そんなになるまで殴られてさぁ。目頭にシワを寄せながら私に聞く、刑事さんに、


「はい。十分です。ありがとうございました」

頭を下げたら、

「なんもさ、また電話行くと思うから。とりあえず今日はゆっくりするんだよ」

ぽんぽん。私の肩を軽く叩いた。

あぁ、優しいひとはたくさんいるんだな。

隣の律さんと、微笑みあった。