「こんなんなる前に、電話しなきゃだーめでしょ。いつでも助けるんだから。そのためにあなた、税金払ってくれてんだから」

あっけらかんとした、おじさんの刑事さんにそんな風に諭されて、案外助けてくれる人は少なくないことを、知る。

「もう少しだけ、かかりそうだから廊下のベンチで待っててください」

言われて、廊下に出たらベンチに座っていた律さんが立ち上がった。

「大丈夫?」

「はい。もう少しだけ、かかりそうみたいで」

「もうすぐ23時か、あの、電話一本だけ掛けてきます。すぐ、戻ります」

微笑んで、正面玄関を出ていく律さん。