ゆっくり、カップに手を伸ばす。

今度は震えていない。

そっと口をつけた紅茶は、ふわっと林檎が薫った。

「…美味しい…」

呟いた私を見て、満足そうに柔らかく微笑んだ、林檎のひと。

「あなたは、あなたを大事にしていいんじゃないですか?自分を大事に出来ない人は、自分以外のひとも大事に出来ないと思うんです。だからさっきみたいに、あなたはあなたの本当にしたいことを選択していけば、これから楽しいことがたくさん起こるはずですよ」

なんて、エラそうですね、オレ。

含んだように笑った。

私は私の本当にしたいことを、しても、いい。

誰かの思う通りではなく、すべて、私の思う通りに。

たぶん、他の人は当たり前に出来ること。

それが、今までの私には出来なかった。