No rain,No rainbow

「ふたりの思い出のものとか、好きなものとか、好きな色とか、なんでもいいんで教えて下さい」

橘さんが、ノートを開きながら律さんと私に聞いた。

「好きなもの、か」

つぶやいた律さん。

「詩さん」

「はい」

律さんに急に呼ばれて、反射で出た私の返事。

「あ、ちがくて。オレの好きなもの…」

自分でも、びっくりした表情を浮かべて、手で自分の口を覆った律さん。

「…っ、わっ!お前、どんだけ泉さんが好きなんだよ…」

呆れ顔の橘さんに、

「…お前もほんとうに好きな人に会えたら、わかんだよ」

言いながら、うつむいた律さんの顔は、赤い。