「この紅茶、さっきの林檎の皮で煮出したんですよ。角切りにした果肉も入れてみました」

喋りだした声に、耳を傾ける。

カップの紅茶を一口飲んだ、林檎のひと。

満足そうに、一度頷いて。

「ん。我ながら、うまい」

静かに微笑んだ。

「あのね。オレ、思うんですけど。傷んで、色が変わっても、例え、元のカタチじゃなくなっても、こうやって色んな方法で輝けると思うんです。林檎ひとつだって、カットしたのが好きな人。摩り下ろしたのが好きな人。ジャムにしたのが好きな人。ひとそれぞれでしょう?それで、いいんじゃないですか?」

押し付けがましくもなく、ひたすら優しい声はゆっくり私の奥まで、染み込んでゆく。