「…もう、あなたにキスして抱きしめたい衝動に極限まで駆られているんです、けど」

どうもさっきから、視線を感じていて…

律さんが指さす先には、ちいさなお店の中から手を振る男のひとの姿があった。

苦々しい表情の律さん。

そんな律さんにまだ、手を振り続ける、男のひと…

思わず、黙礼をした私に、にっこり笑ってお辞儀を返してくれた。

「…あれが知り合い、です…」

個性的なカタチの看板には、流れるような書体で「365」と、書いてある。

お店のドアを開けて出てきたのは、たぶん律さんの同じくらいの歳の男のひと。

穏やかそうな雰囲気が、律さんを思い起こさせる。