「林檎、傷んじゃいましたねぇ」

その声に、テーブルに載った林檎を見つめた。

ぶつけたところから、茶色くなって、ぶよぶよになって、腐って、誰にも見向きもされなくなるなんて。

ふふ。

自嘲気味に出た苦笑い。

「ん?どうしました?」

どこまでも優しく、柔らかな問いは、このひとの声のせいなのかもしれない。

優しく、甘い…

「私、みたいだなぁ。って。この林檎」

呟いた私を、一瞬見つめて。

「あの、キッチン借りてもいいですか?あと、紅茶葉って、ありますか?」

変わらぬ優しい声で、私に問いかけた。