目の前の静かな海とは対象的に、強く、首を横に振った、律さん。

駄目、です。それだけは。

頑なな口調が、律さんの傷の深さを物語っている。

「どうして、ですか?」

律さんに再度、問いかけた。

「どうして、って。わかっているでしょう?」

真っ直ぐに私に向けられた目は、哀しみと切なさに満ちている。

「…オレが、オヤジを殺した日、だからです」

わざと言わせるように仕向けたようで、心が軋んでゆく。

律さんに、こんな顔をさせたいんじゃない。

でも、でも、違う。