微笑んだ律さんは、

「さ、行きましょう」

助手席のドアを開けて、私の手を取った。

ほとんど電灯の灯りがない、風景。

でも…

「…わ、すっごく久しぶり、です」

波の音と、潮のかおり。

「あなたと来たかったんです」

暗闇の中に静かに浮かぶ、深い海。

漆黒の景色でも、ちっとも怖くないのは隣に律さんがいてくれるから。