店長と共に一度、外に出た林檎のひと。

しばらくして、戻ってきた。

玄関に立ったまま、

「少し、上がらせて貰っても大丈夫ですか?」

穏やかな口調で、私に問いかけた。

「もちろんです」

私が頷いたのを確認して、部屋に上がってきた。

「友人から、林檎がたくさん送られてきて。どっちみちひとりじゃ処理しきれないから、あなたにおすそ分けを、と。そしたらなんか、穏やかじゃない雰囲気だったんで。」

床に転がった林檎を拾いながら、私に説明してくれた。

「大丈夫、ですか?」

大丈夫?なんて、自分が自分に言う言葉で。

誰かが私に「大丈夫?」聞いてくれるなんて。

しかも、心底心配そうな表情と声色で。

「大丈夫、です」

大丈夫、大丈夫。

私なら、大丈夫。

何があっても、大丈夫。