No rain,No rainbow

行き先を聞いたら、

「ナイショですよ。楽しみにしてて?」

ゆるやかに笑って、車を走らせる律さん。

時間はまだ、夜の7時。

車の窓を少し開けたら、冷たい夜風が、律さんの言葉によって、熱された頬を冷ましてゆく。

やっと冷めた頬なのに、私の右手をやわらかく、包んでいた律さんの左手が、私の頬に移動して、頬を優しく撫でた。

「もう、冷たくなってる」

ぬくい指先の温度が、頬の表面を行ったり来たりする。

その優しさに酔いながら、ゆっくり目を閉じた。