「…帰って、ください…」

やっとのことで発した声は、みっともなく震えている。

「なんでですか?せっかく来たのに。とりあえず、入れてください」

言いながら、私を押しのけて部屋に入ろうとする店長。

「…や!帰ってください!!」

押し戻そうとした私の両手首を、突然強い力で捻りあげた。

「…や…あつ…い…」

そのまま、ずるずると私の体ごと引きずって、押し倒されたのはベッドの上。

「お互いにさ、離婚して淋しいんだからい
いでしょ?面接の時からかわいいと思ってたし」

ミルクパンから、お湯が沸騰する音がする。

いつも、いつもそうだった。

本当に嫌なことから逃げ出すために、私は感情のスイッチを切って他のことを考える。

やっぱり、私は変われないんだ。