No rain,No rainbow

まぶたの裏に透けている、オレンジに誘われるように目を開けた。

「…あ、起きた?おはよう」

耳をくすぐるのは、律さんの甘い声。

目を開けて間髪入れずに囁かれた、朝イチの挨拶は、律さんが私が起きるのを見つめ続けてくれた証拠で。

その証がくすぐったくも、うれしくて。

ちゃんと起き上がって、

「…おはよう…ござい…?…あ、おそようござい、ます」

時計を確認しながら、応えた私。

壁にかかる時計はすでに、11時を指している。

この小さな部屋に満ちるのは、コーヒーとバターの香ばしい、香り。

「…律さん、何時に起きたんですか?ってか、起きるのが遅くなってすみません。ってか、なんで、起こしてくれないんですか?!」

それはもう、逆ギレの範疇で。

「7時くらい、かなぁ。あなたの寝顔、超絶、可愛いこと、知ってます?あんな寝顔見せられたら、起こせるわけないでしょう?」

なんて、微笑んだ。