No rain,No rainbow

頰を包む、ぬくいてのひら。

「…詩さん…」

吐息混じりの私の名前。

すべてを見せてくれる、律さん。

「詩さん…」

再度呼ばれて、ゆっくり目を開けた。

「…いっしょに、どこまででもいきましょう…ふたりきりで、どこまでも…」

深くなる、律さんの動きに逃げそうになった瞬間、

「…大丈夫?やめる?」

律さんの汗が、前髪を伝って私の頬に落ちた。

そのときにはもう、全てがどうなってもよくなっている。

ただただ、ふたりで抱きしめ合っていれば。

他にほしいものなんて、ひとつも、ない。