「雨男でも、いいこともあるもんですねぇ」

あなたに好いてもらえるなんて。

穏やかな声色は、雨の粒と混ざって私を包む。

雨も、自分自身のことも。

好きじゃなかったものたちは、律さんのおかげで好きなものに変わってゆく。

それは、律さんが隣にいてくれるから、こそ。

このぬくいてのひらを離さずに、ずっとずっと生きてゆこう。

誓いながら握ったてのひらは、当たり前のように握り返される。

律さんを仰ぎ見たら、私を捉える優しい目の色に見つめられる。

今日のこの夜を、一生忘れないと、思う。

優しい雨が降る、この夜を。