「少し前までは、雨があんまり好きじゃなくて」

重ねられる暴言や、拳の熱さに耐えきれずに飛び出した、あの白い部屋。

ふらふらと、行く宛もなく歩き出した夜中。

突然降り出した雨に、なすすべもなくて。

傘なんて、当然持っていなくて。

ぼんやりと灯りを放つコンビニの軒先に、引き寄せられた。

飛び出してきたために、お財布も持っていない。

水滴を含んで、張り付く前髪がうっとおしくて、乱暴に手のひらで払った。

いちど強く、目を瞑って再び開けたら、傘をさして肩で息をするあの人の姿が目の前にあって。

乱暴に手首を掴まれて、無言で引きずられた。

傘は決して、私の頭上には掲げられない。

ずぶ濡れのまま、あの部屋に帰る、絶望。