No rain,No rainbow

「いやーでも緊張したー。藤城さんとかにどんなプロポーズしたのか聞いておくべきでした。藤城さんのことだからきっと、自分で描いた絵とかでプロポーズしたんだろうな」

「あー、藤城さんならやりそうですね」

ふたりで笑いあう。

緩やかなおしゃべりで満たされるこの部屋が、世界でいちばんあたたかい。

「ちょっと、窓をあけてもいいですか?」

緊張したから暑くて。

もうすぐ、冬の始まりだというのに、温かな夜中。

律さんが開けた窓からは、

「「…あ、」」

ふたり、揃った声。

窓の外から風に乗って入って来たのは、アスファルトに染み込む雨のにおい。