「律さん…」

ほの暗い、ちいさな部屋の中。

でも、悲壮感や絶望感は、ない。

その事実に救われながら、今夜も律さんの涙に、寄り添う。

少し前までは、23時になる直前に、律さんの背中を抱きしめていた。

涙の理由を知っていても、泣くところを見られたくないだろうなぁと、勝手に想像していたから。

いつものように、律さんを抱きしめた私に、その日は、

「…詩さん…顔を、見せて…」

耳元から、律さんの声が響いた。