No rain,No rainbow

「…あなたってひとは、ほんとうに…」

おなじみの律さんのつぶやき。

丁度良く、呼んでいたエレベーターの扉が開いた。

繋がれた右手を引かれて、エレベーターに乗り込んだ。

「…り…つ…さ…」

言いかけた言葉はすべて、律さんのくちびるに吸い込まれる。

永い時間だったのか。

それとも、驚くほど短い時間だったのかもしれない。

私の部屋よりも、もっともっと狭い空間で、律さんからのキスを受けた。

背中にはエレベーターの壁。

私の顔の横は律さんの両手で、囲われている。

身動きできないのに、ひとつもこわくはなくて。

このまま、この空間に溶けてしまいたい。

律さんと、ふたりで。