No rain,No rainbow

「…あら…た…」

あんずさんの、小さな声がする。

「…ん、どうした?」

藤城さんが、ソファーに横になっている、あんずさんに声をかけている。

「…あらた…、あらた…」

藤城さんを呼ぶ声は、愛おしそうな色を帯びていて。

聞いているこちらが、恥ずかしくなるほどに、甘い。

「あんず。寝ぼけてんだろ。一回起きろ」

藤城さんに抱き起こされた、あんずさんの目はとろんとしていて、同性の私から見ても色っぽい。

「…おぉい、お前はほんと、そろそろいい加減にしろ」

水持ってきてやるから。

言いながら立ち上がった、藤城さんの手首を掴んだあんずさん。