じゃあ。

どちらともなく、ゆっくり歩き出す。

少し緩んだ雨粒。

緩くぬるんだ温度は、雨のせいなのか、隣を歩くひとのせいなのか。

「どの辺ですか?」

確認しながらゆっくり歩いてくれる、林檎のひと。


お互いに、こっちです。

言い合いながら、歩く。


「「ここです」」

揃った声。

指差した方向は違えど…

「「…え…、」」

またも声が揃ったのは、

それぞれが指差したアパートが、道を挟んで向かい同士だったから…