No rain,No rainbow

「ジャムの瓶の蓋を、」

「…え?」

律さんから、唐突にでた言葉に、面食らっている様子の、藤城さん。

「ジャムの瓶の蓋を、開けられなかったんです。付き合いはじめの頃、彼女が朝ごはんを作ってくれていて」

頼んでくれればいいのに、ムキになって自分でどうしても開ける、って。

でも、なかなか開かなくて。

やっとオレに渡してくれて、でも、オレがひねったらびっくりするくらい、簡単に開いて。

その時に、こんなにも非力なんだって。

どんなに強がっても、こんなに弱くて脆いんだ、って。