ご機嫌斜めのあんずさん。

そんなあんずさんを突っ立ったまま眺めていた藤城さんは、そのまま玄関へ行ってしまった。

不穏な空気に、顔を見合わせる律さんと私。

何か言ったほうがいいのだろうか?

口をひらきけたその時、

戻ってきた、藤城さん。

その手には…

「…やる」

ぶっきらぼうに、あんずさんへ差し出した手には、大輪の色とりどりのガーベラの花束。

「これ、あんずにと、思って。時間までには帰るつもりだったんだけど、選ぶのに時間がかかって」

だから、許せ。

こんなことされたら、女子的に返す言葉はひとつだけ。

「…ずるい…」

あんずさんが、つぶやくのが聞こえた。