もうすぐ、帰ってくると思うんですけど…

言いながら、リビングへ私と律さんを通してくれた、あんずさん。

黒と白で統一された部屋は、藤城さんらしくて。

「殺風景で、すみません。色のついたものを、あんまり置かせてくれなくて」

言いながら、ソファーを勧めてくれた。

「あ、あの、ご結婚、おめでとうございます」

紙袋に入れていた、チューリップの花束を、あんずさんに手渡した。

「わぁ。かわいい!!ありがとうございます!チューリップ、大好きなんです!」

チューリップの花束を受け取ったあんずさんは、顔いっぱいに、笑顔を広げてくれた。

その笑顔は、藤城さんの絵の中のあんずさんのままで、藤城さんの絵を通してすでにあんずさんに会っていたことを知る。