「ここ、ですね」

スマホの地図を確認していた律さんが、マンションを指差した。

エレベーターに乗って、藤城さんの部屋を目指す。

「なんだか、ドキドキしますね」

言い合いながら、「fujishiro」の表札が掛かる、ドアのチャイムを鳴らした。

「はーい」

女の人の声がして、ドアが空いた。

「「…わ…、」」

揃った声は、私と律さんのもの。

「…すごい…」

「…すごいですね…やっぱり、実在したんですね…」

顔を見合わせる、律さんと私をびっくりしたように眺める女の人は、藤城さんが描いたキャンバスから飛び出してきたようで。

藤城さんの表現力の凄さを思い知った。