「あー、あ。痛そう」

少し顔をしかめた、律さん。

あ。わかった。足りないんでしょう?

私を覗き込む。

「あー、たぶん。足りないんですね。ビタミンC」

「って、違うから!」

あなたは、ほんっとうに…

言いながら、拳をくちびるに当てて、笑っている。

「……?」

ぽかんと、律さんを眺める私の顔を見て、

あはは。笑い出した、律さん。

「だから、こういうときは、キスが足りない。って言うんでしょう?普通は」

いたずらっぽく、笑ってみせた。

「…い、いや…?知ってましたけど?それくらい…?」

とぼけてみせたけど、律さんにはすべてお見通し、だ。

「ま、いいですけど、ね?ビタミンCもキスも、いつだってあげます、よ?」

こっち、みて…?

その囁き声に、抗う力なんて私にはなくて。

目を合わせたら、心の中が見えそうなくらいの澄んだ色の目に見つめられた。

ゆっくり閉じた瞼に、頬に、くちびるに、重ねられるぬくいキス。

目を閉じたまま、ぬくい時間に浸った。