No rain,No rainbow

「もうでも、そんなのはどうでもいいから」

ほら。

言いながら、私を抱き寄せてくれる。

広い胸、傷を負った背中。

相反するように見えて、どちらも律さんをカタチ作っている。

傷があるから、その痛みを知っているから、優しいのかもしれない。

そのぶん、とても強いのかもしれない。

前に律さんが私に言ってくれたように、私ももし、過去の律さんに出逢えたら、理不尽な暴力を全力で止めたい。

でもそれは、絶対にできないからせめて、今の律さんの糧、に、なれますように…

願いながら、目を閉じたら、律さんの優しいキスが落ちてきた。

「…やっぱり、律さん、ずるい…」

「そう?」

余裕で笑う、その笑顔にはやっぱり、勝てそうにない。